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TRY & TRYで広がる仕事

執筆:内山知子


私は今、自身の工房でご婦人物のオーダー靴製作と、子どもの足と靴のアドバイスという二つの柱で仕事をさせてもらっています。


そのほかに、SOCCAという3人の会社で必要な事務作業を担っているので、靴を作ったりお客様とお話したりPCに向かって眼精疲労に悩まされたり、という毎日です。


そもそもは、自らの手で最後まで作り上げる「職人」への憧れから入りました。


なぜ靴なのか、それは10代の頃から漠然と靴というプロダクトが好きだったことに加え、個人差が大きくかつ複雑に動く足に合わせる技術への興味、そして趣味ではなく仕事にしたいという思いで、パンプス木型の匠である斎藤敏廣氏の工房の門を叩きました。


木型の繊細さ、木型に忠実に靴を作り上げる技術習得の道のりは、先生の厳しい目と常にお客様が履くという緊張感に鍛えられました。


靴に困ってオーダーに来てくれる人の期待に応えられるようになる、それが自分の最終目標だと思っていました。


しかし、靴を作る仕事が板についてきた頃、自分の子どもが生まれて初めて靴を履く、という局面で、はて、何をしてあげたらよいか、自分が分からなかったのです。


オーダー靴はどうしても時間と費用がかかり、誰にでも勧められる方法ではないわけで、そもそも健康な足はどうやって作られるのか?靴はどうあるべきか?そこまで立ち返る必要がありました。


私にとって靴は、単なるモノとしての興味からはじまり、身体を支える道具として、そして終生寄り添う相棒となり、オーダー靴に頼らずに済む方法、それを一番伝えるべき相手は「子ども」だということに辿り着いたのです。


3年前に読んだある本で、「本当に世の中に必要なことなら代償を求めずにやるのが本来の人間のコミュニティである」という考えに触れたのをきっかけに、私のような疑問を持つ親御さんに向けて、子どもの足と靴に関する情報提供を「無料個別相談会」として月に1回始めてみることにしました。それほどまでに、自分が学んだことはもっと広めなければいけないと感じていたんだと思います。


はじめの1年間は近所の方が少しずつ。その経験をもとに形も変えつつ相談会は続いており、現在3年目になります。コロナ禍でも、遠方からお越しになる方もちらほら。


相談会でお話した後、「こういう話が聞きたかったんです!」と言われたり、近所で偶然出会った方に「以前相談会でお聞きしたこととても役に立ちました」と声をかけて頂いたり、手探りの取り組みですが始めてよかったなぁと感じる瞬間です。


この活動、私はマンツーマンであることに意味があると思っています。


私の話す内容にも、どこに興味を持って聞いてくれるかは人それぞれ、お子さんの性格とか普段の様子、子育てで引っかかっていることをお母さんが話し始めてくれたり、いきなりお子さんが踊りだしてお母さんと一緒に鑑賞するなんてことも(笑)


これはマンツーマンでないと感じ取れない人と人とのコミュニケーションだと思います。まずは関心を持ってもらうこと。そして最低限必要な知識を持ってもらうこと。無理なく家庭に取り入れてもらえる工夫。小さな活動ではありますが、会いに来てくれる親子がいる限り、その親子の生活に一つのきっかけを与えることができる。


一人、また一人と足の運命を変えられる人が増えるかもしれないことは、そのことに誰も気づかないとしても、私のやりがいに違いありません。


思えば、この世界に入ってからはTRY & TRYの繰り返し。幾度となくERRORになっているんだろうけれど、気にしないでまたTRY。自分には肩書きもなく資格もないので、何にも縛られることなくここまで猛進してこれたように思います。


そんな勢いでSOCCAという会社にも参加し、そこで「あったらいいな」を形にしようと奔走しました!


それは、「靴の履き方」の絵本です。


こどもは、絵本からものすごく大量の情報を吸収していると、息子を見ていて実感します。

だから、靴と足の関係についても、絵本の方がきっと伝わるはずです。


児童館や子育て広場でもお話しする機会を頂き、この2年半で足を見たお子さんは100人を超えました。一度でなく二度、三度とお会いする親子もいて、そんな子は着実に靴を上手に履けるようになっているのを見ています。


「私が」ではなく「誰もが」子どもに伝えられるようになれば、これからの日本の靴環境は変わっていくはず。


絵本「くつときみとのあいことば」ぜひご覧ください!


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